Wikipediaによると無数の人が歴史上の人物も含めて双極性障害 だった、だとの「報告」があるようですが、 実際にその著書を読んで「ああ、この人は双極性だな」と思ったのは 「生き生きと生きよ」を書いたゲーテです。 確か10代の時にこの著書に触れて本人が気分の浮き沈みを いかに乗り越えようとしたかが如実に書かれていて 印象に残りました。 あと私自身がその著作に触れたのは一葉船を書いた岡潔さんです。 が、この人の本を読んだ限りでは、双極性だという印象は 受けませんでした。 双極性障害の分厚いマニュアルを書いた女性(ちと名前が思い出せず、 分厚いその著書も見当たらないのですが)も当事者だと自分でオープンにしております。 さて、本題 ご紹介の「双極症」について。この本を監訳された加藤唯史氏は 双極性障害の研究者として有名な方で順天堂大学(彼自身は東大出身) の主任教授です。彼はその外来で患者さんに時間をかけて診療するのは反対だと 言っているのを私は直に耳にしたことがあります。 「デンタルチェアに乗っかっているのは5分でも嫌だ」と。 この方が監訳されたという本はどのような内容になっているのかが興味があります。 というのは、リチウムが双極性障害の気分の浮き沈みを比較的フラットにする、という ことが知られるようになって以来、バイポーラーには薬物療法がひとえに有効で、 その病気に対して心理教育および精神療法は効果がない、とされていました。 私はクリニックで10名弱しか双極症(1型及び2型を含む)の患者さんを診ておりません。 が、この方達の経過が平穏なのはひとえに1セッション30分までお相手をしているからだと 「思い込んで」おりますが、(RCTにかける事は不可能でEBMには乗っ取っていない) ようやく2000年のカナディアンガイドラインで双極症にもカウンセリングが有効である、と言う知見が見られるようになり、ごく最近 UoToDate でも特にラピッドサイクラーに 心理教育、精神療法が有効であるとのエビデンスが紹介されております。 そうした今日の流れの中で加藤先生はどのようにこの著者の本を監訳されているのかが、知りたいところです。今日日本の第一線の精神科医療では1、2時間待ちの5分間診療がメインで(これはひとえに保険制度の犠牲に患者さんも医療者側も犠牲にされている) このような状況に一石を投じるのが心理師の方達に期待されるところです。 |